閑静な住宅街にある私のアパートで、ある日から異変を感じるようになりました。最初は、廊下を通るたびに感じる微かな酸っぱい臭いでした。それが次第に強くなり、夏を迎える頃には、玄関のドアを開けるたびに鼻を突くような強烈な悪臭へと変わっていきました。犯人は、隣の部屋でした。その住人と顔を合わせることはほとんどありませんでしたが、時折聞こえるドアの隙間から、何かが崩れるような音や、カサカサという不気味な気配が伝わってきました。ベランダにはいつからか、真っ黒に変色したゴミ袋が山積みになり、そこから這い出したと思われる虫たちが、私の方にまで侵入してくるようになったのです。隣がゴミ屋敷であるアパートの日常は、想像以上に過酷です。洗濯物を外に干すことはできず、窓を開けて風を通すことも許されません。管理会社に何度も苦情を入れましたが、担当者は「本人に注意はしているが、中に入ることはできない」と繰り返すばかり。法的な手続きには時間がかかるらしく、私はただ、この異様な状況に耐え続けるしかありませんでした。夜、壁一枚隔てた向こう側で、誰かがゴミの山の中で生活していると思うだけで、背中が凍るような思いがしました。精神的なストレスは限界に達し、私はお気に入りのアパートだったにもかかわらず、引越しを真剣に考えるようになりました。ある日、防護服を着た業者たちが隣の部屋に突入し、大量のゴミを運び出す様子を目撃した時、私はようやく深い溜息をつくことができました。運び出されるものの中には、賞味期限が数年前の缶詰や、真っ黒に汚れた布団が含まれていました。あの一室が、このアパート全体の平穏をどれほど奪っていたかを、改めて痛感しました。ゴミ屋敷問題は、居住者本人の問題であると同時に、周囲の住人の生活を破壊する環境犯罪に近いものがあります。集合住宅で暮らす以上、お互いのマナーがどれほど重要か、私はこの苦い経験から学びました。
隣の部屋がゴミ屋敷になったアパートの日常