その家には、三つの山がありました。一つは、台所にそびえ立つ空き缶とペットボトルの山。もう一つは、居間を占領する古新聞と衣類の山。そして最後の一つは、夫の健二と妻の美佐子の間にいつしか築き上げられた、沈黙という名の山でした。健二は毎朝、ゴミの山を跨いで仕事へ行き、夜はゴミの山に埋もれるようにして眠りました。美佐子は、その山の主のように、日がな一日不用品の間にうずくまって、古い雑誌のページをめくっていました。かつて二人が愛し合っていた証拠は、今ではカビの生えたアルバムの底に沈んでいます。健二は何度も美佐子に「片付けてくれ」と懇願しましたが、美佐子はそのたびに「これは必要なものなの、私の人生そのものなのよ」と、透明な目をして答えました。彼女にとって、ゴミは自分を外界の冷たさから守ってくれる、温かな毛布のようなものでした。健二はいつしか言うのをやめました。怒るエネルギーさえ、この部屋の淀んだ空気に吸い取られてしまったようでした。ある夜、大きな地震が起きました。積み上げられたゴミの山が雪崩を起こし、健二と美佐子を隔てていた視界が、さらに高い不用品の壁によって完全に遮断されました。「大丈夫か、美佐子!」健二は叫びました。しかし、返事はありません。彼は必死でゴミをかき分けました。かつて彼女が好きだったブランドの空き箱、自分が贈った一度も使われていないスカーフ、そういったものを乱暴に投げ飛ばしながら、彼は自分がどれほど彼女に触れたかったか、どれほど彼女の顔をまっすぐ見たかったかを思い出していました。ようやく見つけた美佐子は、ゴミの山に挟まれながらも、驚いたように健二を見ていました。「健二さん、助けてくれたのね」その声を聞いた時、健二は気づきました。自分たちが守り続けてきたのは、家ではなく、このゴミの山によって薄められた「孤独」だったのだと。二人はその夜、ゴミの山の中で抱き合って泣きました。翌朝、彼らが最初にしたことは、一番高い山の頂上にある古い時計を外に出すことでした。ゴミ屋敷という名の迷宮から抜け出す旅は、こうして始まりました。愛はゴミに埋もれて消えたわけではなく、ただ、見つけるのに時間がかかっただけだったのです。