清掃業者として、数々の過酷な現場を渡り歩いてきた私にとって、ゴミ屋敷はまさに「悪夢のワンダーランド」です。私たちの仕事は、その混沌とした異空間を現実へと引き戻すことです。現場に到着し、ドアを開けた瞬間に鼻を突くあの独特の臭いは、数え切れないほどの物質が混ざり合い、発酵し、腐敗していく過程で生じるワンダーランドの息吹です。作業を開始すると、私たちはしばしば、ゴミの山の中から驚くべきものに遭遇します。未開封のまま数十年が経過した現金、希少価値のあるコレクション、あるいはかつての家族の幸せな生活を象徴する記録。それらがすべて同じゴミとして扱われ、堆積している様子は、価値観が完全に崩壊したワンダーランドそのものです。清掃員の視点から見れば、ゴミ屋敷には特有の「重力」があります。一度物を置き始めると、その場所には次々と物が吸い寄せられ、層を成していきます。私たちは、その重力を逆行するように、一つひとつの層を丁寧に剥がし、分別し、運び出します。最も危険なのは、害虫や悪臭といった衛生的な問題だけではありません。荷物の重みで床が抜けかけていたり、漏電による火災のリスクが極めて高まっていたりと、ワンダーランドは常に崩壊の危機に晒されています。依頼主の中には、作業が進むにつれてパニックになる方もいれば、憑き物が落ちたように穏やかな表情になる方もいます。私たちは単にゴミを捨てているのではなく、依頼主の心の中にある「捨てられない呪縛」を物理的に解体しているのだと感じることが多々あります。ゴミ屋敷というワンダーランドを更地にする作業は、過酷な肉体労働であると同時に、人間の業の深さに触れる哲学的な体験でもあります。作業を終え、すべての荷物が搬出された後のガランとした空間を見た時、私たちはようやく一人の人間を元の世界へと送り出すことができたという安堵感を覚えます。この混沌とした世界を整理することは、社会の安全を守るだけでなく、個人の尊厳を再構築する尊い仕事なのだと確信しています。
ゴミ屋敷清掃員が見た混沌の世界