ゴミ屋敷清掃という仕事に従事していると、私たちはしばしば、物理的な重さ以上の「重圧」を感じる場面に遭遇します。その最たるものが、大量のぬいぐるみがある現場です。ドアを開けた瞬間、積み上げられたゴミの山の間から、無数のプラスチック製の瞳が一斉にこちらを見つめてくる。それは、他の現場にはない独特の緊張感を生みます。清掃員の立場から言えば、ぬいぐるみは非常に扱いが難しい部類に入ります。単純に掴んで袋に放り込もうとすると、時折、依頼主が悲鳴を上げたり、泣き出したりすることがあるからです。彼らにとってぬいぐるみは、私たちが扱う古紙や空き缶とは根本的に異なる「生命の模倣」です。作業中、踏みつけないように配慮し、敬意を持って扱うことが、依頼主との信頼関係を維持し、作業を円滑に進めるための鉄則となります。ある現場では、依頼主がすべてのぬいぐるみに最後のお別れを言うために、作業が数時間中断したこともありました。私たちはその時間を「必要なコスト」として尊重します。なぜなら、そのプロセスを飛ばしてしまうと、作業完了後に依頼主が激しい喪失感から鬱状態に陥ったり、再び物を溜め込むリバウンドを起こしたりするリスクが高まるからです。一方で、私たち清掃員は、ぬいぐるみが吸い込んだ「部屋の記憶」を肌で感じます。染み付いたタバコの臭い、油汚れ、そして言葉にならない孤独の湿り気。それらを一つひとつ袋に収めていくことは、依頼主の人生の一部を、強制的に過去へと送り出す行為に他なりません。作業が終わった後のガランとした部屋に、一つだけポツンと残されたぬいぐるみを見ることがあります。それは依頼主が、新しい人生を歩むための唯一の伴侶として選んだ「代表」です。その子の背中が、以前よりも少しだけ誇らしげに見えるのは、私たちの気のせいではないと信じています。ゴミ屋敷清掃は、物との戦いであると同時に、物に託された想いとの対話でもあるのです。
清掃員の眼差しと動くはずのない視線との対峙